過払い金返還請求にあたっては,借金をした人の手元にATMの伝票などの証拠がなくても,サラ金やクレジット会社が保存している取引履歴の開示を求めることができますので,それによって過払い金を立証していくことが可能です。また,過払い金の時効は,確かに10年なんですが,それはあくまで「最後の取引日から」10年という意味です。
事例
Aさんは,仕事を始めてまもなくの昭和60年頃から生活費に困ってサラ金やクレジット会社から借金をしてきました。借入先は3社あり,いずれも借金の限度額は50万円で,一度も完済することなく,その限度額近くで返済しては借り入れすることを繰り返してきました。そして,数年前に,借入先からの金利が引き下げられ,どれも年利18%となっていました。
Aさんは,過払い金返還請求のCMや新聞折り込みチラシをよく見かけていて,過払い金というものがあることは知っていましたが,限度額が50万円程度の借金で,そんなに高額の過払い金が発生するとも思っていませんでした。また,Aさんは,借り入れや返済の状況を証明するATMの伝票なども残していなかったため,過払い金が発生するとしても,自分にはそれを証明する証拠もないだろうと思っていました。
ところが,以前から自分と似たような境遇で,サラ金やクレジット会社から借金をしていた友人のBさんが,司法書士さんに相談し,500万円もの過払い金の返還を受けたと聞きました。Bさんによると,司法書士さんに付き添ってもらってBさん自身が何度か裁判所に出頭して訴訟を行ったということでした。Aさんは,Bさんからは3社からの借り入れがあり,どれも限度額50万円で,ATMなどの伝票もないという話を聞いていたので,もしかしたら自分も過払い金返還請求ができるのかも,と思い始めました。
Aさんは,過払い金返還請求ができるのでしょうか。
この事例を聞いた花子さんの見解
過払い金返還請求は,手元に証拠がなくても可能だと聞いたことがありますので,Aさんは,過払い金返還請求が可能だと思います。
この事例を聞いた太郎さんの見解
私も,Aさんは,過払い金返還請求は可能だと思うんですが,過払い金返還請求の時効は10年だという宣伝をよく耳にしますよね。なので,10年以上前の取引分については,過払い金返還請求ができないんじゃないかと思います。
弁護士の見解
今回のケースでは,Aさんは,昭和60年頃から現在までの全ての取引期間について,過払い金返還請求が可能だと思います。
本来,50万円の借金について,サラ金やクレジット会社がとって良い利息は,年利18%までとされていました(利息制限法第1条)。しかし,サラ金やクレジット会社のほとんどは,平成19年頃まで,年利20%台後半くらいの高い利息をとり続けてきました。その払いすぎた利息部分が原因で生じるのが過払い金なんです。
そして,借金をした人の手元にATMの伝票などの証拠がなくても,サラ金やクレジット会社が保存している取引履歴の開示を求めることができますので,それによって過払い金を立証していくことが可能です。
また,過払い金の時効は,確かに10年なんですが,それはあくまで「最後の取引日から」10年という意味です。ですので,今回のケースでは,Aさんは,昭和60年頃から現在までの全ての取引期間について,過払い金返還請求が可能だと思います。
花子さんの質問
Bさんは,司法書士さんに付き添ってもらってBさん自身が何度か裁判所に出頭して訴訟を行ったということなんですが,お仕事をしていると,なかなか平日の昼間に何度も裁判所に出向くという訳にはいかないですよね。裁判所に出頭するというのは,避けようがないんでしょうか。
弁護士の見解
裁判所への出頭を無くすためには,弁護士にご依頼されるのが一番だと思います。
司法書士さんは,140万円を超える請求については代理権を持つことができません。ですので,Bさんのケースでは,Bさん自身が何度か裁判所に出頭する必要があったと思われます。
他方で,弁護士にご依頼される場合は,金額がいくらであっても弁護士は代理権を持つことができます。ですので,弁護士の場合,基本的に過払い金返還請求についてご本人に裁判所に出頭していただくということはありません。
太郎さんの質問
でも,弁護士に依頼すると費用が高額になり,司法書士さんのほうが費用が安くなるんじゃないかと思うんですが,そこは実際にはどうなんでしょう。
弁護士の見解
確かに,弁護士のほうが費用が高いと思われている方も多いようですね。
しかし,実際には,弁護士でも司法書士さんでも,過払い金返還請求についての費用は,ほぼ変わらないんです。
※本記載は平成30年2月22日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。