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隣地・隣家から流れてくる雨水

法律では,低い土地の所有者は,上手にある土地から自然に流れてくる水の流れを妨げてはならないとされています(民法214条)。他方で,法律では,屋根等の工作物から直接に雨水を隣の土地に流れ込ませることはできないとされています(民法218条)。

隣地・隣家から流れてくる雨水

事例

 Aさんの家のある土地は,なだらかな傾斜地にあり,隣のBさんの家が上手にあります。この周辺の土地は,水はけの悪い土地なのか,雨が降るとBさんの土地から雨水がAさんの家の庭に流れ込んできて困っています。Aさんとしては,自分でお金を出して,盛り土をして防ぎたいと考えていますが,法律的には構わないのでしょうか。
 また,隣のBさんの家の屋根にある雨どいは,家が建てられた当初は,問題なく排水できていましたが,長年の痛みで,最近,雨が降ると直接Aさんの家の外壁に雨水が降り注ぐ状態となってしまっています。Aさんは,Bさんに雨どいの修理を求めることはできるのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 Aさんは,盛り土を自分の費用でやろうとしているだけですから,盛り土をすることは問題なく認められると思いますし,雨どいについても,Aさんの家の外壁に雨水が降り注ぐ状態となっているんですから,Bさんに雨どいの修理を求めることもできると思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 私は,Aさんは,盛り土をすることも,雨どいの修理を求めることもできないと思います。今回の問題は,そもそも雨水程度のことですので,Aさんは,これくらいのことは我慢しなければならないと思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,Aさんは,盛り土をすることはできず,他方で,雨どいの修理を求めることはできる,と思われます。
 まず,盛り土についてですが,上手にある隣の土地から自然に流れてくる雨水などを自然に逆らって人工的に遮断してしまうと,逃げ場を失った水が上手の土地に停滞し,上手の土地がいつも湿っているといった状態をまねくことになりかねません。そうなっては,健全な土地利用を損ない,衛生上も問題が生じます。そこで,法律では,低い土地の所有者は,上手にある土地から自然に流れてくる水の流れを妨げてはならないとされています(民法214条)。
 今回のケースで,Bさんの土地から流れてくる雨水は,自然に流れてくる水であると考えられますから,Aさんは自分で費用を出したとしても,盛り土をして流れを妨げることはできないんです。
 他方で,雨どいについてですが,法律では,屋根等の工作物から直接に雨水を隣の土地に流れ込ませることはできないとされています(民法218条)。その理由としては,人工的な工作物については,その設置者が容易に改善のための措置をして,雨水が直接に隣の土地に流れ込むことを防げると考えられるからです。
 今回のケースで,Bさんの雨どいは,長年の痛みが理由で,Aさんの家の外壁に雨水が降り注ぐ状態となっているんですが,このような場合でも,屋根等の工作物から直接に雨水を隣の土地に流れ込ませる場合にあたると考えられていますので,Aさんは,Bさんに対して,雨どいの修理を求めることができることになります。

太郎さんの質問

 隣の家の屋根から,自分の家の敷地に,多少の雨水が入ってくるといったことは,ありがちなことだと思うんですが,そんな場合でも,雨水が入らないような措置を求めることができるんでしょうか。

弁護士の見解

 そのような場合には,雨水が入らないような措置を求めることはできません。
 隣の家の屋根から少しでも雨水が直接流れ込めば,常に法律的手段がとれるとは考えられていないんです。
 法律用語で「受忍限度」というんですが,受忍限度,つまり,我慢しなければいけない限度を超えて,雨水が直接流れ込む状態がひどいと認められて,初めて法律的手段がとれるという点に注意する必要はあると思います。

※本記載は平成30年12月1日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

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