地域への貢献を目指す安心と信頼の法律事務所 西川総合法律事務所
一般民事・商事・家事事件

結婚式場のキャンセル料

民法では,契約でキャンセル料を予め決めておくこと自体は認められています(民法420条)。しかし,事業者と消費者の契約でキャンセル料を定める条項については,キャンセルの理由,時期等から考えて,その事業者に生じる「平均的な損害」の額を超えるものは,その超える部分について,無効とされています(消費者契約法9条1号)。

結婚式場のキャンセル料

事例

 Aさん(32歳男性)とBさん(30歳女性)は,半年後の挙式に向けて結婚式場と挙式の契約を結びました。
 その後,AさんとBさんは,結婚式場と挙式の打ち合わせをしていきましたが,話をしていくうち,どうもその結婚式場に頼りなさを感じるようになってきました。そこで,挙式が4か月後になったところで,その結婚式場に,挙式の契約をキャンセルしたいと申入れました。
 すると,その結婚式場は,契約成立後のキャンセルについては,約款に定めがあり,キャンセル料として100万円を支払って貰うことになっている,と言ってきました。
 確かに,約款にはキャンセル料100万円の記載はありましたが,いくら何でもそれは高すぎると感じるAさんとBさん。AさんとBさんは,結婚式場に100万円のキャンセル料を支払わなければいけないのでしょうか。

この事例を聞いた花子さんの見解

 AさんとBさんは,別に結婚式場に嘘の説明をされて100万円の請求を受けているわけではありませんよね。あくまで,AさんとBさんは,約款にキャンセル料100万円の記載のある挙式の契約を結んでいるので,今更,そのキャンセル料を払わない,という訳にはいかないと思います。

この事例を聞いた太郎さんの見解

 私は,さすがにキャンセル料100万円は高すぎると思います。確かに,約款にはキャンセル料100万円の記載はあるのでしょうが,挙式直前のキャンセルならいざ知らず,4か月も前のキャンセルなら,別の人から新たに挙式の申込がくる可能性もあると思いますので,100万円全額を支払う必要はないと思います。

弁護士の見解

 今回のケースでは,AさんとBさんは,100万円全額を支払う必要はないと思います。
 民法では,契約でキャンセル料を予め決めておくこと自体は認められています(民法420条)。ですので,一見,今回のキャンセル料100万円の約款も有効だと思えるかも知れません。
 しかし,結婚式場のような事業者と,Aさん・Bさんのような一般の消費者との間での契約については,このような民法の原則が修正されているんです。つまり,別の法律で,事業者と消費者の契約でキャンセル料を定める条項について,キャンセルの理由,時期等から考えて,その事業者に生じる「平均的な損害」の額を超えるものは,その超える部分について,無効とされているんです(消費者契約法9条1号)。
 今回のケースでは,AさんとBさんがキャンセルしたのは,挙式の4か月前でした。4か月も前であれば,結婚式場としても新たな挙式の申込がくる可能性も十分にあります。また,結婚式場がAさんとBさんの挙式の準備に多額の費用をかけていたという事情も無いと思われます。ですので,AさんとBさんは,挙式の準備の為に結婚式場が負担した実費などは支払う必要はあると思いますが,約款で定められていた100万円ものキャンセル料は支払う必要はないと思います。

太郎さんの質問

 キャンセルの理由,時期等から考えて,その事業者に生じる「平均的な損害」の額を超えるものが無効ということですが,やはり挙式の直前,例えば挙式の1週間前のキャンセルのような場合には,100万円を支払わなければならない,ということになるんでしょうか。

弁護士の説明

 挙式の1週間前のキャンセルの場合,結婚式場としては,新たな挙式の申込が入る可能性はほとんど無いと思います。AさんとBさんの挙式の為に,その挙式日時の他の申込を断っていたでしょうから,結婚式場としては,かなり大きな損害を受けることになると思います。
 ですので,そのような場合には,キャンセル料100万円の条項も,結婚式場に生じる「平均的な損害」の額を超えないものとして,有効となる可能性が高いと思います。

※本記載は令和元年6月29日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。

法律相談事例一覧に戻る