物が壊れた時の賠償額は,中古品としての時価を基準にして賠償額が定められることになります。しかも,運送業者が運送品の保管や運送などに関して万全を期しており,運送品の破損について防ぎようがなかった場合には,賠償が認められない場合もあります。また,貴金属や美術品などの高価なものの場合,運送業者に事前にその種類や価額を告げていなければ,その賠償を受けることができません。
事例
新社会人のAさんは,就職を機に1人暮らしをすることにし,先日,運送業者に実家から引越先に荷物を運んでもらいました。荷物の運び込みが完了したので,荷物の整理をしていたところ,3年ほど使用していたテレビの画面に大きな傷がついていたため,使い物にならなくなってしまい,買い替えをしなければならなくなりました。買替費用を運送業者に支払ってもらうことができるのでしょうか。
この事例を聞いた花子さんの見解
テレビが使い物にならなくなって,買い替えが必要である以上,運送業者に買替費用を負担してもらえると思います。
この事例を聞いた太郎さんの見解
3年ほど使用していたテレビなので,買い替えが必要になったとはいっても,同程度の中古のテレビを購入する費用しか負担してもらえないと思います。
弁護士の見解
運送業者に負担してもらえる金額は,Aさんに引渡された日のテレビの時価をもとに決めることになります。そのため,テレビが使い物にならなくなったということであれば,3年ほど経過したテレビの時価を基準にして賠償額が定められることになります。しかも,運送業者が運送品の保管や運送などに関して万全を期しており,運送品の破損について防ぎようがなかった場合には,賠償が認められない場合もあります。
花子さんの質問
貴金属や美術品などの価値が下がりにくい高価なものの場合には,満足な賠償を受けることができるのでしょうか。
弁護士の見解
たしかに価値の下がりにくいものであれば,満足な賠償を受けられると思います。ただし,高価なものの場合,運送業者に事前にその種類や価額を告げていなければ,その賠償を受けることができませんので注意が必要です。
※本記載は平成30年6月30日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。