自宅前にあるゴミ集積場の場所を順番で変更することは,①既に15年もの間,ゴミ集積場が自宅前にある不利益を我慢し続けてきた,②購入した土地が,他の分譲地よりも安かった訳ではなかった,③他の場所にゴミの集積場を移動するとしても,ゴミの収集作業に特に支障はない,④近所の住民に,一定期間ごとにゴミ集積場の場所を順番で変更することを提案し,何度か話し合いの場を設けてきた,などといった事情がある場合には,「受忍限度」を超えたものとして,認められる可能性があります。
事例
Aさんの自宅の前の道路上には,ゴミの集積場があり,ゴミの悪臭,猫やカラスによる生ゴミの散乱等がおきて,Aさんは,常々,不快な思いをしてきました。
Aさんは,15年前,当時新たに住宅地として分譲された宅地を購入し,自宅を建てたのですが,その宅地を購入する当時,分譲地の案内に,その宅地の前の道路上にゴミの集積場が設置される予定であることは記載されており,Aさんも,当時は,それを承知の上でその宅地を購入しました。
しかし,だからといって,Aさんの購入した土地が,他の分譲地よりも安かった訳ではありませんでした。また,他の場所にゴミの集積場を移動するとしても,ゴミの収集作業に特に支障はありません。
そこで,Aさんは,Aさんの自宅前の道路上のゴミ集積場を利用している近所の住民に,一定期間ごとにゴミ集積場の場所を順番で変更することを提案し,何度か話し合いの場を設けました。話し合いの結果,近所の住民の大半は,ゴミ集積場の場所を順番で変更することに同意してくれましたが,一部の住民は,同意してくれません。
Aさんが希望している,ゴミ集積場の変更は,認められる可能性があるのでしょうか。
この事例を聞いた太郎さんの見解
Aさんは,ゴミ集積場が自宅前にできることを承知の上で,購入したのですから,今になって,ゴミ集積場を他の場所に変えてくれというのは,さすがに無理なんじゃないでしょうか。
この事例を聞いた花子さんの見解
Aさんは,15年もの間,ゴミ集積場が自宅前にあることで,不快な思いをし続けてきたんですよね。そもそも,Aさんがその土地を購入した際も,他の分譲地より安かった訳でもないんですから,もうそろそろ,他の場所にゴミ集積場を移動させてあげてもいいんじゃないかと思います。
弁護士の見解
このケースで,Aさんが希望している,ゴミ集積場の場所を順番で変更することは,認められる可能性があると思われます。
このような場合,ゴミ集積場が自宅前にある不利益を,Aさんが「我慢しなければいけない限度」,法律用語で「受忍限度」というんですが,この受忍限度を超えているかがポイントです。このケースでは,①Aさんは,既に15年もの間,ゴミ集積場が自宅前にある不利益を我慢し続けてきました。また,②Aさんの購入した土地が,他の分譲地よりも安かった訳ではありませんでした。そして,③他の場所にゴミの集積場を移動するとしても,ゴミの収集作業に特に支障はありません。さらに,④Aさんは,近所の住民に,一定期間ごとにゴミ集積場の場所を順番で変更することを提案し,何度か話し合いの場を設けてきました。
このようなケースでは,Aさんが我慢しなければいけない限度は,既に超えていると判断される可能性は十分にあります。
このケースと似たようなケースで,ゴミ集積場の場所を順番で変更することに反対していた住民に,ゴミ集積場にゴミを捨てることを禁止する判決が出されたこともあるんです(横浜地判平成8年9月27日)。
ただ,「我慢しなければいけない限度」つまり「受忍限度」を超えているかは,ケースバイケースですので,一律に判断しづらい点は,注意が必要です。
そして,ゴミ集積場の変更の問題は,このケースのAさんのように,話し合いで解決しようとしたという,ステップを踏んでいることも重要ですので,まずは,地道に皆さんの理解を求めていくことが大切だと思います。
※本記載は平成30年8月11日現在の法律・判例を前提としていますので,その後の法律・判例の変更につきましてはご自身でお調べください。